工場・倉庫向けエレベーターの定期検査報告と保守点検の違い

工場・倉庫向けのエレベーターは、建築基準法における「定期検査報告」と「保守点検」の実施が義務となる場合があります。

この定期検査報告と保守点検はそれぞれ違いがあり、エレベーターの安全確保に欠かせないものになっているのです。

今回はエレベーターに求められる定期検査報告と、保守点検の違いを紹介します。

それぞれの点検内容を確認して、工場や倉庫のエレベーターを安全な環境にしていきましょう。

定期検査報告と保守点検を行う必要のあるエレベーターとは

定期検査報告と保守点検を行う必要のあるエレベーターは、建築基準法においてホームエレベーターや積載量1トン以上のエレベーター(性能検査を受けているもの)を除く、全てが検査対象と定められています。

定期検査報告と保守点検をそれぞれのタイミングで実施する必要があるため、導入後は常にこの2つの検査を念頭に置いて利用しなければなりません。

定期検査報告とは

エレベーターの定期検査報告とは、建築基準法第12条の3項に基づいて行われる検査方法です。 昇降機の安全性が保たれていることを確認するために、定期的にエレベーターとその関連設備の検査が行われます。

定期検査報告はエレベーター管理者の義務になる

定期検査報告はエレベーター管理者の義務になり、検査結果を報告書にまとめて特定行政庁に提出する必要があります。

定期検査報告として提出した記録は、3年以上の保管が必要です。

定期検査報告は、建築基準法第101条によって罰則が定められています。

「求められる検査をせずにエレベーターの使用を続けた」「検査はしたが報告をせずに放置した」「検査と違う結果を虚偽申告した」場合などには、100万円以下の罰金が課せられます。

そのため工場・倉庫向けエレベーターを導入する場合には、定期検査が義務であることを理解して正しく対応する必要があるのです。

定期検査報告が行える検査者について

エレベーターの定期検査報告が行えるのは、「一級建築士」「二級建築士」「昇降機等検査員」の資格を持つ人に限定されます。

そのため一般的には、上記の資格を所有している従業員を雇うエレベーターのメンテナンス業者に定期検査報告を依頼することになるでしょう。

定期検査報告は通常6ヶ月から1年ごとに行われる

定期検査報告は、定期的に検査報告を行うことが義務付けられています。

定期的とは特定行政庁が定める時期に準じていて、多くの場合6ヶ月から1年のペースでの実施となるでしょう。

最低でも1年に1回は定期検査報告が必要になるので、毎年のスケジュールに組み込んでおくことがおすすめです。

定期検査報告の検査内容

エレベーターの定期検査報告では、複数の箇所を検査してその安全性を確認します。

具体的には以下のようなものが、国土交通省によって検査項目として示されています。

・機械室の状況(通路、照明装置や換気設備など)は正常か

・潤滑油の油量や劣化状況に問題はないか

・ブレーキの保持力や構成機器の作動状況は問題ないか

・かごの上昇、下降の速度は適切か

定期検査報告では、上記のようなさまざまな項目からエレベーターにおける安全性の確認が行われます。

検査の結果は項目ごとに「要是正」「重要点点検」「指摘なし」の3段会で審査され、対応の必要性が明確にされます。

要是正とされた場合には、修理や部品交換といった対応を即座に行うことが求められます。

重要点点検とされた項目は、次回の検査時に要是正になる可能性があるので、より注意して見ていく必要があるでしょう。

保守点検とは

保守点検とは、建築基準法第8条で定められている検査方法を指します。

エレベーターを常時適法な状態にできるように努めるもので、定期的な検査によって安全性を高めることが目的となります。

保守点検は義務ではない

保守点検は定期検査報告と違い、エレベーター所有者の義務ではありません。

努力規定であるとされているので、仮に何もしなくても罰則を受けることはないのです。

しかし、エレベーターを安全に使い続けるためにも、定期的な保守点検は重要です。

保守点検に必要な資格はない

保守点検の検査者には、定期検査報告と違って必須の資格がありません。

しかし素人目でエレベーターの保守と点検を行うことは困難であるため、一般的にはこちらもメンテナンス業者に依頼することになるでしょう。

保守点検のペースは使用頻度に応じる

保守点検のペースは、そのエレベーターの使用頻度に応じるとされています。

通常利用の場合には、基本的に1ヶ月に1回程度の点検が多くなります。

使用頻度が低い場合には数ヶ月に1回というペースも考えられますが、なるべくならこまめに保守点検を行うことが望ましいです。

保守点検の検査内容

保守点検の検査内容は、国土交通省の「エレベーター保守・点検業務標準契約書」によって示されています。

たとえば以下のような点が、点検内容として挙げられています。

・巻上機の潤滑状態の良否や油漏れの有無

・電動発電機や戸の開閉などに異常音が発生していないか

・非常止め装置の取り付けに異常がないか

・機械室への通行や出入りに支障がないか

保守点検でも、さまざまな点検項目が用意されています。

これらの項目からエレベーターの異常を発見し、事故などのトラブルを防ぐことや定期検査報告で要是正とされないことが、保守点検の役割になるでしょう。

エレベーター・昇降機に関する法令・法規一覧

まとめ

工場・倉庫向けのエレベーターにおける、定期検査報告と保守点検の違いを解説しました。

どちらの点検内容も、エレベーターを安全に使うための基本になります。

この機会にそれぞれの違いを把握して、正しくエレベーターの点検を行えるようにしていきましょう。

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