工場・倉庫に設置するエレベーターや荷物用リフトの昇降の仕組みやメンテナンスについて解説

荷物用エレベーターや簡易リフトは、事業の効率化を進める上で重要なポイントとなります。

荷物の輸送を専門としたエレベーターを工場や倉庫に設置することは、これまで以上の作業量を確保することにもつながるでしょう。

そこでこちらでは荷物用エレベーター・リフトの基本的な仕組みと、メンテナンス方法について解説します。

併せてもうひとつの選択肢となる垂直搬送機の特徴についても確認するので、エレベーターの導入から事業の効率化を考える際には参考にしてみてください。

荷物用エレベーターとは

荷物用エレベーターとは、文字通り荷物の運搬を目的とした昇降機のことです。

人もしくは荷物を運搬する昇降機は、建築基準法によって以下の2種類に分けられます。

エレベーター:かごの面積1㎡超又は高さ1.2m超のもの

小荷物専用昇降機:かごの面積1㎡以下かつ高さ1.2m以下のもの

昇降機という機器の中でまず「エレベーター」と「小荷物専用昇降機」が区分され、そこからさらに「乗用エレベーター」と「荷物用エレベーター」「寝台用エレベーター」「自動車用エレベーター」などに分けられるのです。

つまり荷物用エレベーターとは、「かごの面積1㎡超又は高さ1.2m超のもの」で、「荷物を運ぶことを目的とした昇降機」と定義できるでしょう。

小荷物専用昇降機は一切人が乗ることができず、文字通り荷物を運ぶためだけの昇降機 となります。

一方で荷物用エレベーターは、荷扱者や運転者の搭乗が可能となっているのが特徴です。

荷物用エレベーターの仕組みについて

上記のような特徴を持つ荷物用エレベーターには、主に「ロープ式」と「油圧式」という2つの種類があり、それぞれ昇降の仕組みも異なっています。

まずは昇降形式ごとの仕組みを、下記で確認してみましょう。

ロープ式

荷物用エレベーターでは、「トラクション型」と呼ばれるロープ式の仕組みが多く採用されています。

荷物を運ぶかごとつり合いとなる重りを「つるべ式」につなぐ形になっていて、設置した巻上機のレールを使って昇降するのが特徴です。

長い距離を昇降させる必要があり、ある程度のスピードが必要な場合などに役立つ形式となります。

また、つり合いの重りを使っているため、ランニングコストを抑えて利用できる点も導入におけるメリットです。

油圧式

主に低層で昇降機能を利用する場合には、油圧式による荷物用エレベーターも検討されます。

油圧式とは、油の圧力を活用してかごを昇降させる仕組みのことです。

直接式(ダイレクトプランジャー式)と間接式(インダイレクトプランジャー式)といった複数のスタイルがあり、それぞれ以下のような仕組みを取っています

<直接式(ダイレクトプランジャー式)>

油圧ジャッキを荷物用エレベーターの底の部分に設置して、直接かごを昇降させる方法です。

上部に機械室を設置する必要がなく、高さ制限がある場所などで利用しやすくなります。

<間接式(インダイレクトプランジャー式)>

油圧シリンダーをかごの側面や後部に設置し、プランジャーの動きをロープなどに間接的に伝えることで荷物用エレベーターを動かす仕組みです。

油圧ジャッキを埋める必要がなく、効率良くかごの昇降が行えます。

油圧式は建物の上部に重荷がかからないため、重たい物を運ぶのに適している仕組みです。

また、仕組みの設置場所も基本的に荷物用エレベーター下部になるので、多くの建物に採用しやすいというメリットがあります。

荷物を輸送する簡易リフトとは

簡易リフトとは、「労働安全衛生法」の第1条の9によって定められている、荷物用エレベーターのことです。

建築基準法の分類と似ていますが、かごの面積が1平方メ-トル以下、「または」天井の高さが1.2メートル以下となっている点などが違いとなります。

導入の際には労働安全衛生法と建築基準法の両方を確認し、設置した荷物用エレベーターが違法な状態とならないように注意する必要があるでしょう。

荷物用エレベーターを安全に動かすにはメンテナンスが必要

荷物用エレベーターを安全に運用していくためには、定期的なメンテナンスが欠かせません。

建築基準法によって荷物用エレベーターの定期検査・保守点検は義務となっているため、導入の際にはメンテナンスまで考えておく必要があるでしょう。

荷物用エレベーターは、チリや埃によってできた傷などによって、部品が摩耗することは避けられません。

それらはワイヤーの断裂や電子機器の断線といったトラブルにつながるので、定期的なメンテナンスによって原因の究明と早期の対策が必要となるのです。

また荷物用エレベーターは日常的に簡易的なメンテナンスを行うことも可能で、ちょっとした工夫が長期利用を近づけます。

たとえば扉の開閉時に衝撃を与えないようにしたり、清掃してゴミを出さないように意識したりすることで、より安全な状態で使っていくこともできるのです。

設置後にはそういった工夫を意識して、こまめなメンテナンスが行えるように備えることもおすすめされます。

荷物用エレベーターのトラブルは、ときに大きな事故の原因にもなってしまいます。

そのため常にメンテナンスを意識して、万全の状態で使えるように備えるのが導入におけるポイントです。

エレベーターの導入時には「垂直搬送機」という選択も考えられる

荷物用エレベーターや簡易リフトを導入する際には、「垂直搬送機」の採用も考えることができます。

荷物用エレベーターとは違った特徴を持つ垂直搬送機は、よりスムーズに職場の効率化を進めるきっかけにもなるでしょう。

垂直搬送機とは?

垂直搬送機とは、工場や倉庫などに設置して荷物を垂直方向に輸送する装置のことを指します。

荷物専用である点などは荷物用エレベーターと変わりませんが、搬入や搬出時には直接人が立ち入らない形になっているのが特徴です。

垂直搬送機は、労働安全衛生法や建築基準法の対象とならないため、昇降機の導入に必要となる確認の申請や定期検査報告といった作業が省略できます。

かごの寸法に制限もなくなるので、物理的に荷物用エレベーターが導入できない場合にも選択肢として考えられるのです。

また荷物用エレベーターや昇降機は2つの法律で規定されている関係から、仕様によっては片方の法律にしか適合せず、知らず知らずのうちに違法な状態で使用することになる可能性もあります。

これはエレベーターが労働安全衛生法と建築基準法の2つの法律で規定されているのに対して、簡易リフトは労働安全衛生法のみで規定されていることから起きる問題です。

垂直搬送機の導入は、そういった意図しない違法利用というリスクへの備えになることからも、注目を集める結果となっているのです。

上記のような理由から、荷物用エレベーターやリフトの設置を計画する際には、同時に垂直搬送機も候補に挙げてみることをおすすめします。

まとめ

工場や倉庫に設置する荷物用エレベーター・リフトについて、基本的な面から解説いたしました。

これから荷物用エレベーターの導入を行う、もしくは漠然と作業の効率化を図りたいという場合には、まず仕組みやメンテナンスの必要性といった基本から確認してみるのがポイントです。

荷物用エレベーターの基本を把握できれば、垂直搬送機と比較して導入を検討することもおすすめです。

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