工場や倉庫にエレベーターを導入することには、業務効率化や作業員の負担軽減などさまざまなメリットがあります。
そのため新規でエレベーターを導入することは、工場や倉庫の運営に良い影響を及ぼすきっかけになるでしょう。
そんなエレベーターの導入を検討している方々に知っておいていただきたいのが、「労働安全衛生法」と「建築基準法」です。
エレベーターと深い関わりを持つこの2つの法律を知ることは、正しい導入につながります。
こちらで労働安全衛生法と建築基準法を紹介しますので、導入前にそれぞれの詳細を確認してみてください。
エレベーターの導入前には「労働安全衛生法」と「建築基準法」について把握しておく
エレベーターは、「労働安全衛生法」と「建築基準法」という2つの法律によって定義されています。
定期的な検査の義務や導入時の届け出の必要性が規定されているので、労働安全衛生法と建築基準法を知ることがエレベーター導入におけるひとつの準備になっているのです。
労働安全衛生法と建築基準法についての知識がないと、知らないうちに罰則の対象となるなどのリスクがあります。
これからエレベーターを導入するのなら、責任者として労働安全衛生法と建築基準法の基本は把握しておきましょう。
労働安全衛生法とは
労働安全衛生法とは、職場で働く労働者の安全と健康を確保し、快適に仕事ができる環境作りの促進を目指す法律です。
仕事中に発生する危険から労働者を守り、労働災害を未然に防止するように努めることを事業者に求める内容になっています。
労働安全衛生法は、エレベーターの利用における安全性の確保にも関わっていて、責任者の義務となる定期検査の内容などを明記しています。
労働安全衛生法の適応対象となるエレベーターについて
労働安全衛生法の適応対象となるエレベーターは、「工場などに設置されるエレベーター(一般公衆のために使用されるもの以外)で、積載荷重が0.25トン以上になるもの」と定義されています。
そのため工場に導入するエレベーターも、この労働安全衛生法の対象として扱われるのです。
労働安全衛生法における昇降機はかごのサイズによって区分され、以下のように定義されます。
・かごの床面積が1㎡を超え、かつ天井の高さが1.2mを超えるもの
→エレベーター
・かごの床面積が1m2以下、またはその高さが1.2m以内のもの
→簡易リフト
労働安全衛生法においては、かごの床面積か高さが規定を下回ると、エレベーターではなく簡易リフトになります。
労働安全衛生法が定めるエレベーターの定期検査
労働安全衛生法では、対象となるエレベーターに対して「性能検査」を行う必要があります。
性能検査は年に1回のペースで行われ、検査した証となる「労働安全衛生法検査済証」の発行を受けることが目的です。
発行される検査証には有効期限があり、毎年性能検査を行なって更新していく必要があります。
性能検査の対象となるのは「積載荷重が1トン以上のエレベーター」であり、該当しない場合には後述する「定期検査報告」を受けなくてはなりません。
性能検査は義務であり、罰則規定として6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられることが明記されています。
性能検査を行うエレベーターは、クレーン等安全規則が定める「定期自主検査」の実施も必要です。
定期自主検査は1ヶ月に1回程度行われ、ワイヤロープの損傷や安全装置の異常などいくつかの項目を検査します。
労働安全衛生法におけるエレベーターの導入時に必要とされる届け出や手順
労働安全衛生法で1トン以上のエレベーターを設置する場合、以下のような手順を踏む必要があります。
↓
・所轄の労働基準監督署長に対して、「エレベーター設置届」を提出する
↓
・エレベーターの設置作業を行う
↓
・設置後にエレベーター機能の点検や荷重試験を行い、「落成検査申請書」を所轄労働基準監督署長に提出する
↓
・落成検査に合格し、エレベーター検査証を受け取る
上記のような流れによって、労働安全衛生法のエレベーターの設置が完了します。
建築基準法とは
建築基準法は、人々が安全かつ快適な暮らしを実現できるように、建物及びその設備などにルールを定める法律です。
エレベーター(昇降機)に関する記述も含まれ、「建築物に設ける昇降機は、安全かつ昇降路の周壁及び開口部の防火上支障がない構造にする」「高さ31メートルを超える建築物(政令で定めるもの以外)は、非常用の昇降機を設ける」などの基準が明記されています。
建築基準法によるエレベーターの定義もあり、必要な定期検査の義務も定められています。
建築基準法の適応対象となるエレベーターについて
建築基準法においては、人または荷物を運搬する昇降機は、用途や積載荷重に関わらず本法律の適応対象となります。
建築基準法でも、昇降機はかごのサイズで以下のように区分されます。
・床面積1㎡超、またはその高さが1.2mを超えるもの
→エレベーター
・かごの床面積が1m2以下、かつ高さが1.2m以内のもの
→小荷物専用昇降機
建築基準法と労働安全衛生法ではエレベーターの定義が違うため、労働安全衛生法で簡易リフトとなったものも、建築基準法ではエレベーターに区分されるケースがあります。
建築基準法が定める定期検査
建築基準法では、「定期検査報告」と「保守点検」による安全性の確保が求められます。
定期検査報告は、昇降機の所有者における義務となるもので、定期的な検査によって安全性を確保するための手段です。
検査の頻度は特定行政庁(建築主事のある地方自治体の長)が定める時期とされ、主に6ヶ月〜1年の間に1度になります。
違反した場合には、100万円以下の罰金が課せられることがあるので注意が必要です。
エレベーターの所有者は、定期検査報告とは別に保守点検と呼ばれる検査も行います。
常時適法な状態にキープすることを目的としたもので、月に1回程度のペースで実施されることが多いです。
こちらは努力規定であるため義務ではなく、特別に罰則などは設けられていません。
建築基準法におけるエレベーターの導入時に必要とされる届け出や手順
建築基準法におけるエレベーターの設置は労働安全衛生法とは違って、以下のような手順で進められます。
以上が、建築基準法におけるエレベーター設置に関する手続きです。
ホームエレベーターなどの設置時には、こちらの手順で導入が進められます。
まとめ
工場や倉庫にエレベーターを導入する際には、労働安全衛生法と建築基準法について把握することが大切です。
どのような検査や届け出が必要になるのかを、この機会にまとめて確認してみてください。