工場や倉庫では、重い荷物や大量の荷物を上下階層にスムーズに運搬する手段として「荷物用エレベーター」を設置・運用するケースもあります。
この荷物用エレベーターをはじめとした各種エレベーター・昇降機は、そのサイズによって規制が異なることに注意が必要です。
そこでこちらでは、工場や倉庫で活躍する荷物用エレベーターのサイズ規制について解説します。
エレベーターのサイズと法規制の関係
エレベーターのサイズは、エレベーターに関係する法律と深く関わっています。
具体的には「サイズによって、法律でどういった扱いになるか異なる」という特徴があるのです。
そして、エレベーターのサイズに関係する法律は、大きく分けて「建築基準法」と「労働安全衛生法」の2種類があります。
建築基準法におけるエレベーターのサイズと扱いの違い
建築基準法においては、サイズによって「エレベーター」と「小荷物専用昇降機」という2種類の扱いに分類されます。
昇降機が「かご床面積1㎡以下」であり、かつ「高さ1.2m以下」のものに対して、小荷物専用昇降機の規定が適用されます。
一方で、それに該当しないもの、つまり「かご床面積1㎡超」または「高さ1.2m超」のどちらか、または両方を満たすものをエレベーターとして扱うのです。
以上をまとめると、建築基準法におけるエレベーターのサイズと扱いの関連は以下の図式になります。
かご床面積 | |||
---|---|---|---|
1㎡以下 | 1㎡超 | ||
高さ | 1.2m超 | エレベーター | エレベーター |
1.2m以下 | 小荷物専用昇降機 | エレベーター |
労働安全衛生法におけるエレベーターのサイズと扱いの違い
労働安全衛生法においては、サイズによって「エレベーター」と「簡易リフト」という2種類の扱いに分類されます。
昇降機が「かご床面積1㎡超」であり、かつ「高さ1.2m超」のものに対して、エレベーターの規定が適用されます。
一方で、それに該当しないもの、つまり「かご床面積1㎡以下」または「高さ1.2m以下」のどちらか、または両方を満たすものを簡易リフトとして扱うのです。
以上をまとめると、労働安全衛生法におけるエレベーターのサイズと扱いの関連は以下の図式になります。
かご床面積 | |||
---|---|---|---|
1㎡以下 | 1㎡超 | ||
高さ | 1.2m超 | 簡易リフト | エレベーター |
1.2m以下 | 簡易リフト | 簡易リフト |
例えば簡易リフトは法定点検が不要であり、日常的・定期的な保守点検を行うことで安全に運用します。
2つの法律の扱いの厄介なポイント
建築基準法と労働安全衛生法の2つの法律による荷物用エレベーターの扱いについて、厄介な点があります。
それは「基準が同じなのに扱いが異なるケースがあることです。
上記2つの表を重ねてみましょう。
かご床面積 | |||
---|---|---|---|
1㎡以下 | 1㎡超 | ||
高さ | 1.2m超 | 建築基準法:エレベーター 労働安全衛生法:簡易リフト | 建築基準法:エレベーター 労働安全衛生法:エレベーター |
1.2m以下 | 建築基準法:小荷物専用昇降機 労働安全衛生法:簡易リフト | 建築基準法:エレベーター 労働安全衛生法:簡易リフト |
例えば「かご床面積1㎡以下・高さ1.2m超」(上記の表で左上の部分に該当)の昇降機は、労働安全衛生法においては簡易リフトに分類されますが、建築基準法ではエレベーターに該当します。
つまり、この昇降機は建築基準法の規定により確認申請が必要など、より厳格な扱いが必要な種類であるということになるのです。
問題化している違法設置エレベーター
建築基準法と労働安全衛生法で、基準となる数字は同じでも扱いが異なることにより、問題化しているのが「違法設置エレベーター」です。
違法設置エレベーターによる事故
エレベーターに分類される方が厳格な扱いを受ける最大の理由は「人が乗ることを認められている」ことが挙げられます。
簡易リフトも小荷物専用昇降機も、「人が乗ることを禁止している(メンテナンス等の際は例外)」ため、エレベーターよりも優遇されている部分が多いのです。
過去に、建築基準法ではエレベーターとして扱うべきであるにも関わらず、事故後に調べてみるとエレベーターとしての安全上の基準を満たしていなかったという事例があります。
荷物用エレベーターも人が乗る
「荷物用エレベーター」の場合、「荷物用」とありますが荷扱者や運転者が乗ることが認められているため、人が乗るエレベーターとしての安全基準を満たして設置しなければなりません。
もし、荷物専用の昇降機としての安全性のみ満たして、人が乗ることを前提とした基準を満たしていない仕様の場合、人の命にかかわるような大事故が発生するリスクが高まります。
「労働安全衛生法上は簡易リフトに分類され、建築基準法上はエレベーターに分類される荷物用エレベーター」も少なくありません。
荷物用エレベーターを設置する際には、2つの法律の基準に合わせた、違法設置にならないエレベーターとして設置しなければなりません。
まとめ:荷物用エレベーターはサイズ規制で違法設置にならないように注意して導入するべし
荷物用エレベーターやその他のエレベーター・昇降機は、サイズと法律の違いによって扱いが異なります。
2つの法律どちらの基準も満たして設置しないと、荷物用エレベーターによる事故で物や人に大きな損害が発生するリスクが高まるのです。
違法設置にならないことを確認して、荷物用エレベーターや、あるいはそれ以外のタイプの昇降機を導入して業務効率や安全性を確保してください。