一口に「エレベーター」といっても、用途に応じてさまざまなタイプのエレベーターが設置され、生活や仕事を楽にしてくれています。
そんなエレベーターの一種に「小型エレベーター」と呼ばれるものがあります。
言葉のニュアンスから「小型で特殊なエレベーターなのだろう」と推測することは難しくありませんが、実際に導入するとなれば具体的な定義について把握しておく必要があるでしょう。
そこでこちらでは、小型エレベーターの定義と、小型エレベーターを導入する前に押さえておきたいポイントについて解説します。
小型エレベーターの定義
「小型エレベーター」について簡単に説明すると「積載荷重の条件を緩和された特殊なエレベーター」となります。
積載荷重の条件とは?
エレベーターにおける「積載荷重」の条件とは、建築基準法施行令第129条の5において規定されている条件です。
エレベーターのかごの条件によって、以下の数値を下回ってはならないとされています。
かごの種類 | 積載荷重(単位:ニュートン) | |
---|---|---|
乗用エレベーターのかご (人荷共用エレベーターを含み、 寝台用エレベーターを除く) | 床面積が1.5㎡以下 | 床面積1㎡につき3,600として計算した数値 |
床面積が1.5㎡超え 3㎡以下 | 床面積の1.5㎡を超える面積に対して 1㎡につき4,900として計算した数値に 5,400を加えた数値 | |
床面積が3㎡を超える | 床面積の3㎡を超える面積に対して 1㎡につき5,900として計算した数値に 13,000を加えた数値 | |
乗用エレベーター以外の エレベーターのかご | 床面積1㎡につき2,500 (自動車運搬用エレベーターにあっては1,500) として計算した数値 |
小型エレベーターにおいて緩和されている積載荷重の条件
建設省告示第1415号「用途が特殊なエレベーター及び当該エレベーターのかごの積載荷重を定める件」においては、この告示が定める条件を満たしたエレベーターに関しては、建築基準法施行令の定める(上記の)積載荷重の基準とは異なる数値が適用されます。
その3つ目の項目として「昇降行程が十メートル以下で、かつ、かごの床面積が一・一平方メートル以下のエレベーター:床面積一平方メートルにつき千八百として計算した数値で、かつ、千三百以上の数値」とあります。
この項目および告示1415号において「小型エレベーター」という言葉は使われていませんが、この3つ目の項目に記載されている「昇降工程:10m以下」かつ「かご床面積:1.1㎡以下」の2つの条件を満たしているエレベーターのことを、「小型エレベーター」として扱います。
小型エレベーターのステータスと注意点
「一般社団法人日本エレベーター協会標準JEAS-712(標12-02)」において、小型エレベーターに関するさまざまな規定が記されています。
小型エレベーターのステータス
上記標準において、小型エレベーターは以下のような設置条件の標準が定められています。
昇降行程 | 10m以下 |
---|---|
かご床面積 | 1.1㎡以下 |
定員 | 3名以下 |
積載量 | 200kg以下 |
内装材 | 基本的に難燃材を使用 |
設置できる場所 | 利用者がある程度限定される 小規模な建築物 |
小型エレベーターを導入する前に知っておきたい注意点
小型エレベーターは、通常のエレベーターと比較して「積載荷重の条件が緩和されている」というメリットがあります。
言い換えると「普通のエレベーターよりも大人数の乗り込みに耐えられない」ということです。
設置できる場所として「利用者がある程度限定される小規模な建築物」とありますが、具体的には「福祉施設」や「診療所」のような施設が該当します。
一方で「マンション」や「大型病院」のように、一度に利用する人数が多い施設では、標準にあるような「定員3名以下・積載量200㎏以下」の基準を満たすことが難しいのです。
一度に利用する人数や、一日に利用する人数や頻度が多い場合であれば、通常の乗用エレベーターを設置したほうが良いでしょう。
ホームエレベーターとの違い
似たようなエレベーターに「ホームエレベーター」があります。
ホームエレベーターは文字通り「住宅に設置するエレベーター」であり、介護や生活の利便性向上を目的に設置されることが多いです。
ホームエレベーターは小型エレベーターと同じく積載荷重の条件が緩和されていますが、設置条件として「エレベーターが住戸内のみを昇降する」ことが含まれています。
前述のような福祉施設や診療所といった、住戸ではない建物・施設にはホームエレベーターを設置することはできません。
つまり、小型エレベーターは「通常のエレベーターを設置するのは負担になる」「けれども設置個所がホームエレベーターを設置できる『住戸』ではない」場合に利便性が高いエレベーターなのです。
まとめ:小型エレベーターは緩和された条件で設置できるが制限もある
小型エレベーターは、通常の乗用エレベーターよりも緩和された条件で設置できますが、乗用エレベーターよりも制限された利用法を守らなければなりません。
また、通常のエレベーターと同様に、建築基準法の規定に基づいた定期検査が必要です。
いずれにしても、その設備の条件にマッチした、法律やルールを守った安全な利用法を遵守しなければ、事故のリスクが高まります。
設置条件や適切な利用法について業者としっかり話し合い、安全に小型エレベーターを運用してください。