一般的に「エレベーター」と聞くとマンションや商業施設にあるものをイメージされる方が多いでしょう。しかし、エレベーターといっても種類があり、設置・管理する側はその違いを明確に把握する必要があります。
そこで今回は、エレベーターの種類について解説します。エレベーターの種類やそれぞれの違いについてわかりやすく解説しますので、エレベーターに関する知識を深めたい方はぜひ参考にご覧ください。
用途によるエレベーターの分類
まずは「用途」によってエレベーターの種類を分類する方法です。
乗用エレベーター
人を乗せて輸送する目的で設置されるエレベーターです。商業施設やマンション、ビルなどに設置されているイメージが強いですが、最近では住戸内を移動する目的で設置される「ホームエレベーター」(住戸内移動のみを目的とした、床面積1.1㎡以下のもの)の需要も高まっています
人荷用エレベーター
人だけではなく、荷物を輸送することにも対応しているエレベーターです。ただし、法律上の取扱いは乗用と同じ種類として扱われます。
寝台用エレベーター
寝台やストレッチャーに載せた人を輸送するために設置されるエレベーターです。医療施設や福祉施設等において設置されることが多く、建築基準法施行令第129条3項により寝台やストレッチャーを日常的に使用する建物以外に設置することは禁止されています。
荷物用エレベーター
荷物の輸送のみを目的に設置されるエレベーターです。荷物を扱う人やエレベーターの運転者以外の人が乗ることは禁止されています。
なお、労働安全衛生法により規定されている「簡易リフト」についても、建築基準法施行令第129条3項の規定が適用されます。
自動車用エレベーター
自動車の輸送を目的に設置されるエレベーターです。駐車場に設置されることが多く、このエレベーターには自動車の運転手以外の人が乗ることを禁止しています。
特殊な用途
住宅のバリアフリー工事などで用いられることが多い「いす式昇降機」や「段差解消機」も、エレベーターの一種だといえます。
構造によるエレベーターの分類
次は「構造」によってエレベーターの種類を分類する方法です。
ロープ式
ロープによって昇降させるタイプのエレベーターです。
一般的なタイプは「トラクション式」と呼ばれ、エレベーター構造の真上に「巻き上げ機」が設置されている機械室があり、つり合い重りと、かごのバランスでエレベーターを昇降させます(機械室がないタイプもあり)。
トラクション式の他に「巻胴式」というタイプもあり、こちらはエレベーターのかごにロープを結んで、これを巻胴(ドラム)で巻取り・巻戻して昇降させる仕組みです。
油圧式
油の圧力を利用して昇降させるタイプのエレベーターです。低層の建物に利用されることが多く、プランジャー(上下する部分)がエレベーターの真下に直結しており、電動ポンプによってタンク内の油圧を制御してプランジャーを上下させてエレベーターを昇降させる仕組みになっています。
上記の仕組みを「直接式」といい、プランジャーの頂部にある綱車にかけたロープにより間接的に昇降させるタイプが「関節式」です。
他にも、アーム頂部に取付けたエレベーターを油圧ジャッキの力で昇降させる「パンタグラフ式」もあります。
ロープ式と油圧式のメリット・デメリット
「ロープ式エレベーター」と「油圧式エレベーター」には、それぞれメリット・デメリットがあります。
ロープ式のメリットは次の通りです。
- 釣り合いおもりによりモーターの負荷を軽減される
- 昇降速度が油圧式より速い
- 稼働時の電気代が割安になる
- 稼働時の駆動音が静か
一方、ロープ式のデメリットは次の通りです。
- 建物上部に機械室が必要な場合がある
- 積載重量が重いと建物上部に負荷がかかる
次に油圧式のメリットは次の通りです。
- 建物上部に機械室が不要である
- 下から押し上げるので積載重量が重くでも建物上部に負荷がかからない
一方、油圧式のデメリットは次の通りです。
- 昇降距離と昇降速度がロープ式に劣る
- 稼働時の消費電力が多い
- 乗り心地の悪さや油のにおいを感じることがある
人を乗せて移動する目的であれば「ロープ式」が、工場などで積載量の多い移動を伴う場合は「油圧式」が適していることがわかります。
また、以前は機械室の存在がネックで油圧式にしていたところも、今では機械室不要でロープ式エレベーターを設置できることから、デメリットが少なくなってロープ式に変えたというところも多いようです。
特殊な構造
日本で見られるエレベーターの多くは「ロープ式」か「油圧式」のどちらかなのですが、他にも「リニアモーター式」や「水圧式」といったエレベーター構造もあります。リニアモーター式とは、回転運動を直線運動に置き換えるリニアモーターを利用したエレベーターのことです。水圧式は油圧式よりコンパクトに設置することができ、また環境に配慮した「水」で駆動するエレベーターのことです。それぞれの仕組みは、設置スペースや環境に配慮された様々な工夫が施されているのが特徴です。
まとめ:種類を知って適切なエレベーター選びを
エレベーターは種類ごとに異なる特徴を有しています。用途や構造を知ることで、どんなエレベーターを利用したいのか、安全管理上何に気を配るべきなのかを把握できるでしょう。
関連法が異なるエレベーターもありますので、エレベーターの設置や管理に関して不明な点があればプロである業者の意見を参考にしてください。
関連記事