よく「おはぎ」と「ぼたもち」の違いが取り上げられるように、世の中には「言い方を変えただけで同じもの」「名前が似ているけれど実は違うもの」があります。
この記事をご覧になっている方は「昇降リフト」「昇降機」「簡易リフト」の3つを出されて、その違いを明確に説明できるでしょうか?
そこでこちらでは、マテハン機器でよくある質問の1つ「昇降リフト・昇降機・簡易リフトに違いはあるの?」について回答および関連情報の説明をします。
昇降リフト・昇降機・簡易リフトの定義
結論から述べると、これら3つのうち明確に「建築基準法」などの法令に名前が掲載されているのは、昇降機・簡易リフトの2つです。
昇降リフトという名称は法令上には存在しないため、昇降機や簡易リフトに該当する製品をそのように呼称しているものであると推測できます。
そのため、この項目では昇降機と簡易リフト、これらの法令上の定義について解説します。
昇降機の定義
建築基準法における昇降機の定義は「一定の昇降路や経路、その他これに類する部分を介し、動力を用いて人や物を、建築物のある階から他の階などへ移動・運搬するための設備」です。
建築基準法施行令において、昇降機として分類されているものは以下の3種類です。
・エレベーター(人または人及び物を運搬する昇降機、並びに物を運搬するための昇降機でかごの水平投影面積が1㎡を超え、または天井の高さが1.2mを超えるもの)
・エスカレーター
・小荷物専用昇降機(物を運搬するための昇降機で、かごの水平投影面積が1㎡メートル以下で、かつ天井の高さが1.2m以下のもの)
簡易リフトの定義
簡易リフトは労働安全衛生法で定義されており、その定義は「エレベーターのうち、荷物運搬だけを目的とするエレベーターであり、搬器の床面積が1㎡以下、または天井の高さが1.2m以下のもの」です。
簡易リフトはエレベーターの中の分類の1つであり、定義の中のサイズを両方とも超えるものはエレベーターとして分類されます。
エレベーターと簡易リフトの違い
エレベーターと簡易リフトの違いは「法規制の扱いの違い」でもあります。
細かい部分を含めると複雑化しますが、運用にあたって特に把握するべきことは「人が乗っても良いかどうか」と「法定点検が必要かどうか」の2点です。
人が乗っても良いかどうか
運用上、最も重要なことは「簡易リフトには人が乗ってはいけない」ことです。
労働安全衛生法施行令において、簡易リフトの定義には「荷のみを運搬することを目的とするエレベーター」とあります。
つまり、簡易リフトに該当する場合は、荷物運搬だけを目的とするものであり、人が乗ることは禁止されているのです。
例外的に「メンテナンス等の為」であれば別ですが、日常的な使用法において単独または荷物と一緒に人が簡易リフトに乗ることは禁止しましょう。
なお、簡易リフトはその特殊性を鑑みて「人が乗ってはいけない」などの事項を見えやすい部分に掲示する必要があります。
一方で簡易リフトに該当しないエレベーターは、人が乗る、または荷物と一緒に人が乗ることは問題ありません。
法定点検が必要かどうか
次に注意するべきことは「簡易リフトには法定点検は必要ない」ことです。
エレベーターには、法令により規定されている点検・報告義務がありますが、簡易リフトはその法令の適用対象外となっています。
ただし、日常的な点検(始業前点検)や定期点検(月単位での点検や、長期不使用後の再使用開始時の点検など)は、安全衛生上必ず必要です。
目的に合った機器・設備を導入することが重要
昇降機などの機器・機材は、施設や事業所における移動や操業の効率を向上させる、要するに「人が楽に移動や仕事ができる」点において高い利便性を発揮してくれます。
しかしながら、昇降機などの設備の他にも、いわゆる「マテハン機器」と呼ばれる設備・機材は種類が豊富であり、種類ごとに法的な扱いや日常的な使い方の違いなどについて考慮しなければなりません。
例えば「荷物と一緒に人が乗ること」を前提に昇降機を導入するのであれば、荷物運搬のみを可能とする簡易リフトや小荷物専用昇降機では、その目的を果たすことができません。
いわゆる「乗用エレベーター」「人荷用エレベーター」など、人が乗っても安全に使用できる昇降機を導入することで、導入目的を果たすことができるでしょう。
このように、設備や機材を自社に導入するにあたっては「どんな目的・使い方をするのか」を明確にし、それに合った機種を選定することが重要なのです。
導入にあたってはメーカーや販売業者と話し合いをすることになるでしょうが、その際に使用目的について虚偽の内容を話すと、仮に費用を安く抑えられても導入後の事故発生リスク等のトラブルは避けられません。
どんな目的で導入するのかを正直に話し、適切な特徴を持った機種を導入してください。
まとめ:昇降機にも種類があり、種類ごとに法的扱いや使い方が異なる
昇降機や簡易リフト、昇降リフトなどの設備・機材は、名前の違いが法的扱いや適切な使い方の違いなどに関わるので、適切な導入・運用を遵守しなければなりません。
この手の設備・機材の導入は業務効率改善等のメリットがありますが、違法な導入・運用をして事故が発生すれば社会的信用を失います。
導入時にはその目的がはっきりしているはずですから、それを業者に正直に話し、どんな物を導入すれば安全にその目的を果たせるのかをしっかりと話し合ってください。