人や荷物を多層階に移動させるために「エレベーター」は大活躍です。
エレベーターがなければ大きな不便を感じる場所も少なくありませんが、一口にエレベーターといってもさまざまな種類があります。
そこでこちらでは「小型エレベーター」と呼ばれるタイプのエレベーターについて、その定義や価格の相場について解説します。
小型エレベーターとは
小型エレベーターとは、通常の乗用エレベーターに適用される基準の一部が緩和されているエレベーターです。
建築基準法施行令第129条の5第2項について
一般的なエレベーターには、「建築基準法施行令第129条の5第2項」によって、かごの積載荷重がかごの種類に応じて基準が定められています。
しかし、「建設省告示第1415号(用途が特殊なエレベーター及び当該エレベーターのかごの積載荷重を定める件)」において、一定の基準を満たしたエレベーターに関しては前述の施行令とは別の基準を適用するとしています。
建設省告示の基準に則り、施行令基準の例外が適用されるエレベーターを、小型エレベーターとして扱っているのです。
一般社団法人日本エレベーター協会標準JEAS-712(標12-02)について
小型エレベーターの扱いに関しては「一般社団法人日本エレベーター協会標準JEAS-712(標12-02)(小規模建物用小型エレベーターに関する標準)」において定められています。
通常のエレベーターやホームエレベーターとの違い
小型エレベーターは「通常のエレベーターを設置するのは手間がかかる」けれども「ホームエレベーターを設置できない事情がある」場合において活躍します。
通常のエレベーターは、建築基準法施行令の基準を満たす必要があり、コストもかかります。
一般家庭用に利用されている「ホームエレベーター」は、住戸内でのみ運用されることが前提となっていますので、一般家庭以外では利用できません。
つまり、小型エレベーターは「通常のエレベーターより緩い基準で利用でき、住宅ではない場所でも使える」というメリットがあるのです。
小型エレベーターの基準
小型エレベーターも、通常とは異なるとはいえさまざまなルールを守らなければなりません。
代表的なものをいくつか解説します。
昇降行程が10m以下である
「建設省告示第1415号」において、建築基準法施行令の適用除外の条件として「昇降行程が10m以下」であることを規定しています。
かご床面積が1.1㎡以下である
同じく「建設省告示第1415号」において、「かご床面積が1.1㎡以下」であることを規定しています。
住宅以外にも設置可能
「一般社団法人日本エレベーター協会標準JEAS-712」において、設置可能な建造物として「利用者がある程度限定されている小規模な建築物であること」と規定されています。
同じく規制が緩和されるホームエレベーターが住戸内でしか設置・運用できないのに対して、小型エレベーターの場合はある程度の規模の施設であれば住戸以外の建物にも設置可能であるとしているのです。
ただし、積載荷重の基準が緩く設定されているので、大人数が一度に乗る可能性の高い施設・建物には向いていません。
小型エレベーターの価格相場
この手の製品は参考価格を公表していない(要見積もり)ことが多いので参考情報は少ないのですが、パナソニックの小型エレベーターは希望小売価格として300万円台~500万円台という金額を提示しています。
実際に設置するとなれば、本体価格プラスして工事費用やその他の諸費用が掛かりますので、具体的な費用総額は業者に問い合わせて確認する必要があります。
小型エレベーター設置の注意点
小型エレベーターを設置・運用することを検討するにあたっては、いくつか注意しなければならない点があります。
メーカーの提示する条件に従う
小型エレベーターは、通常の乗用エレベーターと比較してデリケートであり、メーカーが提示する使用上の条件については必ず遵守しなければなりません。
例えば、三菱日立ホームエレベーターの小規模建物用エレベーター(スイ~とモア)では、「管理責任者の選任」「管理者銘板を各階の乗場付近に掲示」「1日の使用頻度は150回以下」という3つの条件を提示しています。
メーカーが提示するということは、安全上必ず必要になる措置・使用条件であるということです。
用途を伝えて適切な選定を行う
小型エレベーターを設置する際には「どんな用途・環境で使用するのか」を明確に伝えて、小型エレベーターが適しているかどうかを判断してもらってください。
小型エレベーターは通常のエレベーターよりも1日の使用可能回数や積載荷重が低く、設置する施設や建物の利用者状況によっては小型エレベーターではなく通常の乗用エレベーターを選ぶべきというケースも珍しくありません。
正しい情報を伝えることで、メーカーも適切な製品選びが可能になります。
費用節約などの理由から事実を伝えないケースもありますが、利用者の安全を考慮して間違いない情報を業者に伝えて、導入するエレベーターやその他の設備を選定しましょう。
まとめ:小型エレベーターは規制が緩和されたエレベーター
小型エレベーターは通常のエレベーターよりも規制が緩和されており、使い勝手の良いケースも多いです。
しかし、使用条件などは厳しい場合もあり、設置場所によっては通常のエレベーターの方がマッチしているケースもあります。
導入にあたっては本当に小型エレベーターで問題ないかを、業者をしっかり話し合って判断してください。