どんなに気を付けていても「事故」に巻き込まれることは十分に考えられます。
誰にでも事故は起こり得るものであるとしても、そのリスクを抑えてケガや迷惑をかけてしまう事態を少しでも避けることは可能です。
そこでこちらでは、倉庫や工場などの施設で運用される「エレベーターの落下事故」を防ぐために必要なことについて解説します。
エレベーターの法定点検
エレベーターは「昇降機の維持及び運行の管理に関する指針」において、「1年に1回以上の頻度で定期的な検査および報告の義務」と「1か月に1回以上の頻度で定期的な点検および整備の義務」について規定されています。
使用頻度の高いエレベーターであれば、より短い期間での定期検査を行うことで、安全なエレベーター運用につながるでしょう。
エレベーターには事故防止の機能が搭載されている
エレベーターには、落下事故などのトラブルを未然に防ぐためのさまざまな装置が搭載されています。
エレベーターの法定の安全装置
例えば「建築基準法施行令第129条の7の3号」においては、エレベーターのかごが到着しないと出入り口のドアが開閉しないようにするための装置の取り付けが義務付けられています。
また「建築基準法施行令第129条の10」「建設省告示1423号」において、エレベーターのかごが異常な速度で移動するのを防ぐための非常止め装置について規定されています。
このように、現代の法令に則った安全装置等の設置基準を満たしているエレベーターであれば、安全上の対策は十分に施されているといえます。
改正前に設置したものは例外
法令を遵守してる業者に設置を依頼したエレベーターであれば、現行法に則った安全装置の備わっているエレベーターを用意してくれるでしょう。
問題なのは「改正前に設置されたエレベーター」です。
安全装置の設置義務について規定された法改正後のエレベーターは、その規定に則る必要がありますが、改正前にすでに設置されているエレベーターに関してはある程度の猶予が認められています。
もし、現行法に抵触するような内容で運用されているエレベーターであれば、速やかに現行法に則った安全装置等の措置を講じなければなりません。
「点検していれば問題ない」と思わないことが重要
前述の通り、エレベーターの運用においては定期的な点検検査や修繕および報告の義務について規定されており、多くの事業所において守られていることでしょう。
では、定期点検を問題なく実施していれば事故は起こらないのかといえば、そうではありません。
事故のリスク
事故は、いつ、どんな状況で起こるかわかりません。
エレベーターは頑丈に作られているとはいえ人工物ですから、パーツの劣化や不具合が起きてもおかしくないでしょう。
そうした問題を定期検査で見つけて修繕するのが重要ですが、定期検査後に問題が生じることも十分に考えられます。
前兆を見逃さないことが重要
では、事故は防ぎようがないのかといえば、そうでもありません。
エレベーターなどの機器に不具合が生じた際には、何らかの違和感を感じることもあるでしょう。
例えば「いつもより振動が大きい」「普段は聞かない異音が聞こえる」「妙に油臭い」といった、五感に訴えかける異常を、利用者が感じ取ることもあるかもしれません。
杞憂に終われば良いのですが、ひょっとしたら何らかの大事故につながるような異常を知らせるサインである可能性は捨てきれないのです。
基本的な「安全な使い方」は絶対遵守
落下事故については「安全な使い方」を遵守することも重要です。
例えば「積載荷重〇〇kgまで」「人が乗ることは禁止」といったルールは、「昇降機の維持及び運行の管理に関する指針」において「標識の掲示等」として見やすい適切な位置に掲示が義務付けられています。
荷重積載を少しでも超過すれば直ちに落下事故が起こるというものではありませんが、日常的に積載荷重を超過する等の危険な使い方をしていれば、エレベーターの故障および事故の発生リスクを高めることになるのです。
異常を感知したらすぐに「使用停止」と「検査修繕」を
もし、従業員などのエレベーター利用者からエレベーター使用時に何らかの異常を感じ取ったという報告を受けたら、早めに当該エレベーターの使用中止と、検査の実施をすることをおすすめします。
「昇降機の維持及び運行の管理に関する指針」においては「エレベーターの運行に支障があるときは直ちに運行を中止して、技術者に整備させる」ことを義務付けています。
一時的とはいえエレベーターが使えなくなることは作業の妨げになるでしょうが、落下事故などにつながる可能性を捨て置けば、その何倍もの大きさのトラブルが発生する可能性が高いことを念頭に置かなければなりません。
まとめ:法定点検と安全な運用を守ってエレベーターの落下事故を防ごう
すでに日本国内でも何件ものエレベーター落下事故が発生し、尊い命が奪われています。
技術の進歩と法整備が進んでいるとはいえ、エレベーターの落下事故のリスクをゼロにすることはできません。
しかし、法定点検の実施と安全な運用方法を遵守することにより、落下事故のリスクを抑えることは可能です。
ときに厳密な運用方法が作業効率を悪くすることもあるでしょうが、大事故につながるリスクを少しでも抑えることが、最終的に誰にとっても利益になることを考慮しましょう。