垂直搬送機のメリットとは?導入する際の注意点も解説

物流センターや生産工場で多く導入されている垂直搬送機は、荷物用エレベータなどと比較してもメリットが非常に多い搬送設備です。ただし、導入するに当たって注意するべきポイントもあるため、あらかじめ垂直搬送機の特徴を理解しておかなければなりません。

そこで本記事では、垂直搬送機のメリットやデメリットを詳しく解説します。導入する際の注意点も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。

垂直搬送機とは?

垂直搬送機とは、荷物を上下に搬送するための設備です。大きな荷物も素早く上下階搬送できるため、物流センターはもちろんのこと、生産工場でも多く導入されている搬送設備のひとつです。

なお、垂直搬送機は荷物の上下階搬送は可能ですが、用途は荷物専用の搬送設備となります。そのため、垂直搬送機の昇降路から荷物の搬出入を行う際には、人が介入できない構造となっています。

垂直搬送機の特徴

垂直搬送機以外にも、上下階に荷物を搬送する設備は沢山存在します。そのため、垂直搬送機とは具体的にどのような特徴があるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。

そこでここからは、垂直搬送機の定義や構造について解説します。

垂直搬送機の定義

動力を用いて上下階搬送を行う垂直搬送機に明確な定義がありませんが、建築基準法における「昇降機」には該当しない搬送設備です。

なお、建築基準法における昇降機の定義は以下の通りです。

第二節 昇降機

(適用の範囲)

第百二十九条の三 この節の規定は、建築物に設ける次に掲げる昇降機に適用する。

一 人又は人及び物を運搬する昇降機(次号に掲げるものを除く。)並びに物を運搬するための昇降機でかごの水平投影面積が一平方メートルを超え、又は天井の高さが一・二メートルを超えるもの(以下「エレベーター」という。)

二 エスカレーター

三 物を運搬するための昇降機で、かごの水平投影面積が一平方メートル以下で、かつ、天井の高さが一・二メートル以下のもの(以下「小荷物専用昇降機」という。)

引用:e-GOV 法令検索

上記の昇降機に該当するエレベーターやエスカレーター、小荷物専用昇降機とは違って、垂直搬送機は荷物限定の搬送設備となります。

主な構造

建築基準法に該当する昇降機は、法令によって安全装置や主要構造が指定されています。一方、昇降機に該当しない垂直搬送機は、荷物専用の搬送設備のため構造は非常にシンプルです。

なお、垂直搬送機は荷物を搬送する際、作業者が昇降路内に入ることができない構造となっているため、安全に上下階搬送を行うことができます。

垂直搬送機の価格

ひとくちに垂直搬送機といっても、製造メーカーや種類によってもさまざまなタイプが存在するため、価格帯は大きく開いてしまう傾向にあります。そのため、ここでは垂直搬送機の※※代表メーカーである鈴木製機の製品ラインナップを元に紹介します。

・トレーリフター:約450万円~

・アクトレーター:約820万円~

・ポーリフトオート:約380万円~

なお、垂直搬送機の価格は、対応している最大荷重や設置環境によって開きが出てくるため、詳細は各メーカーに問い合わせて確認しましょう。

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垂直搬送機のメリット

垂直搬送機を導入することで得られるメリットは以下の通りです。

・搬送能力が高い

・法律の規制を受けない

・導入コストを抑えられる

・事故が起きにくく安全

ここからは、これら垂直搬送機のメリットについて詳しく解説します。

搬送能力が高い

垂直搬送機は、荷物用エレベーターと比較して高い搬送能力があります。搬送コンベアと接続することで連続搬送も実現できるため、水平方向と上下階搬送の立体的な搬送システムが構築できます。

また、垂直搬送機の間口には、対面式のZ型や同面方向にC型などが存在します。そのため、建屋側の条件に合わせて、比較的自由なラインレイアウトが可能です。

法律の規制を受けない

通常の昇降設備の場合、建築基準法や労働安全衛生法の規制対象となるため、該当する法令規則を遵守する必要があります。

一方で、人が乗ることがない垂直搬送機は、上記で解説した法律の規制を受けることがありません。そのため、設置に関する確認申請や定期検査報告などを、行政に申請したり報告する必要もなくなります。

導入コストを抑えられる

垂直搬送機の大きなメリットと言えるのが、いわゆる初期導入コストです。というのも、通常の荷物用エレベーターなどを導入する場合、建築基準法の『昇降機』に該当してしまうため、建築確認申請などを行う必要性が出てきます。

そのため、通常よりも多くの工数がかかってしまうことからも、導入コストは大きく膨れ上がってしまう傾向にあります。一方で、垂直搬送機の場合、建築確認申請なども行う必要が無く法律の適用除外となるため、エレベーターなどと比較すると約半分程度の予算で導入できます。

事故が起きにくく安全

人が乗る昇降機では、安全装置があったとしても事故が発生するリスクは一定の割合で存在します。

一方の垂直搬送機は、作業者が昇降路内に入ることができない設計となるため、事故が起きにくくて安全です。運用するに当たって、事故のリスクを下げられる点は、企業にとっても大きなメリットと言えるでしょう。

建築基準法における垂直搬送機とは

垂直搬送機のデメリット

一見するとメリットばかりの垂直搬送機ですが、以下のようなデメリットも存在します。

・ある程度搬送できる規格が決まる

・搬送能力を発揮できないケースもある

では、これらの内容は具体的にどういったことなのかを解説します。

搬送できる規格が決まる

一般的な垂直搬送機は、搬送コンベアとの連結によって構築するケースが多く、搬送できる荷物の規格もある程度決まってしまう傾向があります。

ただし、垂直搬送機の単独活用やトレー型なら、パレットやかご台車、ハンドパレットトラックなど、搬送物の形状や規格を選ばず使用できます。そのため、導入する際には自社が取り扱う荷物に合った最適な製品を選択することをおすすめします。

搬送能力を発揮できないケースもある

垂直搬送機は、搬送コンベアと連結することで連続搬送を実現できるため、高い搬送能力を実現できます。一方で、搬送コンベアとの連結ではなく、垂直搬送機単独で使用した場合については、本来持つ搬送能力を発揮できないケースも存在します。

ただし、垂直搬送機の単独活用でも、荷物用エレベーターより搬送能力が高くなるケースが多いです。そのため、このあたりの解釈は、導入目的や利用方法によっても異なると言えるでしょう。

垂直搬送機を導入する際の注意点

垂直搬送機を導入する際には、以下の点に注意しましょう。

・汎用性の高い機種も視野に入れる

・コンベアとの組み合わせで搬送能力を上げる

では、それぞれの内容を詳しく解説します。

汎用性の高い機種も視野に入れる

垂直搬送機には、メーカーによって多くの機種が発売されています。そのため、導入する際には自社にあった機種選びをすることが重要と言えます。

例えば、汎用性の高い機種を選んでおくことで、荷物の形状に関係なく搬送できるメリットがあるため、導入後に取扱商品が変動しても対応できるでしょう。取扱商品にバラツキがあるようなケースでは、導入後の変動にも備えて機種選びをするのがおすすめです。

コンベアと組み合わせて搬送能力を上げる

垂直搬送機の製品ラインナップの中には、搬送コンベアと連結して運用できるタイプが発売されています。

このコンベアと連結できるタイプの垂直搬送機は、非常に高い搬送能力があるため、効率的な生産ラインを構築できます。単独搬送とは違い、効率的な搬送システムを構築できるため、生産性を大幅に向上させることができるでしょう。

まとめ

垂直搬送機は、建築基準法や労働安全衛生法の適用除外となる搬送設備です。そのため、役所に確認申請を提出する必要も無く、導入コストを大きく下げることが可能です。また、元々人が乗ることができない搬送設備となるため、安全性も高く事故が起きてしまうリスクを下げることも可能なメリットがあります。

なお、垂直搬送機はコンベアと接続することで、非常に高い搬送能力を実現できますが、単独搬送も問題なく対応できます。加えて、エレベーターと比較しても半分近くのコストで導入できるため、コストを抑えたい方にもおすすめの搬送設備です。

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