これまでの倉庫内作業と言えば、バーコードによる読み取りで運用されている傾向にありました。しかし、近年では、より多くの情報を記録できるICタグが活用されているため、どのような仕組みなのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、倉庫管理に重要なICタグの基礎知識をわかりやすく解説します。また、バーコードとの違いや導入するメリット、活用する際の注意点なども併せて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
ICタグとは?
ICタグとは、別名「電子タグ」や「無線タグ」とも呼ばれている通信機能を持った荷札のことを指します。形状はさまざまですが、構造としては内部にICチップとアンテナが内蔵されています。
大きな特徴としては、専用の読み取り機(RFIDリーダー)によって、複数のICタグを同時に読み取ることができる点です。無線の届く範囲はすべて識別できるようになるため、例えばダンボールに入っていても問題なく識別できます。
ICタグの種類
非接触通信ができるICタグですが、使用する電波の周波数帯によって種類が分かれています。なお、現在多く利用されているICタグは、主に「UHF帯」と「NFC帯」の2種類が存在します。
そこでここからは、ICタグの種類として「UHF帯」と「NFC帯」の特徴をより詳しく解説します。
UHFタグ
UHFタグは、920MHzの周波数帯を利用しているICタグの種類です。主な特徴としては、3〜5mの距離でも一括で読み取りができるため、入出庫や棚卸し管理、ロケーション管理、在庫管理で多く利用されています。
なお、比較的高価な専用の読み取りリーダーが必要で、無線局申請が必要なケースもあります。その他にも、水や金属に弱い特徴があるため、屋外環境での使用には向いていません。
NFCタグ
NFCタグは、13.56MHzの周波数帯を利用しているICタグの種類です。UHFタグとは違って、個別に認識しなければならないほか、通信距離も10cm以下と短くなければなりません。
なお、USB接続タイプやスマートフォンに内蔵タイプでも読み取れるため、比較的安価なリーダーで対応できます。また、UHFタグとは反対に、水や金属に強いメリットがあるため、主に交通系のICカードでよく利用されています。
ICタグとバーコードの違いとは?
従来の倉庫管理では、バーコードによる読み取りが一般的でした。そのため、ICタグとバーコードでは、どのような点で違ってくるのか気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこでここからは、ICタグとバーコードで違ってくるポイントについて解説します。
記憶容量が大きい
ICタグとバーコードで大きく変わってくるポイントは、データを記憶できる容量の差です。ICタグでは非常に多くのデータを記録できるため、商品の詳細情報(型番・サイズ・重量・色etc…)なども一括して管理することができます。
また、バーコードとは違って記録したデータはいつでも書き換えを行えるため、必要に応じて詳細情報を変更できます。
複数データの読み取り
従来のバーコードでは、基本的に一度にひとつのデータしか読み取りが行えませんでした。そのため、読み取り作業に多くのリソースを取られてしまい、作業効率が上がらないというデメリットがありました。
一方、ICタグの場合、複数のデータを一括して読み取ることができます。また、条件を設定してフィルタリングを行い読み取りができるため、読み取り作業の幅も広がり作業効率が上がるメリットがあります。
倉庫管理でICタグを活用するメリットとは?
人手不足や人件費の高騰など、さまざまなことが問題視されている昨今ですが、ICタグを導入することによって非常に多くの恩恵を受けることが可能です。
そこでここからは、倉庫管理においてICタグを導入するメリットとは具体的に何なのかを解説します。
業務の効率化
倉庫内作業をバーコードや人による目視でおこなっている場合、商品を1点づつ確認しなければならないため、作業効率はそれほど向上しません。場合によっては多くの作業日数が必要になるケースもあるでしょう。
一方、ICタグでは商品を個別に識別する必要がなく、一括して読み取ることが可能です。ダンボール内に梱包されてしまっている商品についても、取り出すことなく読み取りができるため、業務効率は大幅に向上します。
作業品質の向上
商品を個別に確認する従来の方法では、作業ミスも多く発生します。例えば、目視の場合では、見間違いや記入ミスなども発生します。また、バーコードの場合も、二重で読み取りをしてしまうケースもあるでしょう。
しかし、ICタグの場合では、より正確に商品データを読み取ることができるため、作業員の質に左右されることがありません。属人化にならないため、総じて作業品質は向上すると言えます。
リアルタイム管理の実現
商品をアナログ管理している場合、リアルタイムで在庫状況を確認できません。そのため、ECサイトのようなケースでは、ユーザーが商品を購入したタイミングは在庫切れだったというケースも出てきてしまいます。
しかし、ICタグでは、商品の在庫情報もデータとして管理することが可能です。リアルタイムで在庫情報を共有できるようになるため、在庫切れによる販売機会の損失なども防ぐことができます。
倉庫管理でICタグを導入する場合の注意点とは?
ICタグを活用することによって、業務内容の効率化や作業品質の向上、リアルタイム管理の実現など、非常に多くのメリットがあります。ただし、導入する場合には、いくつか注意しておかなければならないポイントも存在します。
そこでここからは、倉庫管理でICタグを導入する場合の注意点をピックアップして紹介します。
導入コスト
以前までは非常に高額だったICタグですが、現在は技術も発展したため、1枚あたりの費用水準は通常のタグであれば数十円程度まで価格帯は下がってきました。とはいえ、初期導入時にかかるコストはそれなりに大きいため、費用対効果は事前に算出する必要があります。
特に導入現場の状況によって必要な機能やオペレーションも変わってくるため、ランニングコストも踏まえた事前のシミュレーションが重要と言えるでしょう。
読み取り精度
ICタグを導入するに当たって、非常に重要なポイントになることと言えば「読み取り精度」です。現場のオペレーションが十分に機能するためには必須事項とも言えますので、精度が確保できているかどうか検証しなければなりません。
特に金属関係を取り扱うケースの場合、通常のICタグとは違って読み取り精度が落ちる傾向にあります。また、金属対応のICタグは、通常のICタグとは違って費用も高額です。以上のことからも、現場状況に応じた適切な検証をした上で、導入の可否を検討しましょう。
棚卸作業でICタグを導入して効率化した事例
ICタグを導入する前は、バーコードの管理システムによって運営していた事例。数ヶ月に一度、倉庫内スタッフが5名で棚卸し作業を行っていたものの、作業時間が多くかかってしまいスムーズに出荷できない事態も発生。作業効率の改善と作業ミスを減らすことが大きな課題という状況でした。
そこで、作業効率を向上させる施策として、ICタグを活用した棚卸しシステムを導入しました。導入後はICタグによる一括スキャンが行えるようになったため、バーコードのような読み取りミスもなく、作業効率と品質が大幅に向上しました。
また、従来は棚の後ろ側に保管してある商品も、一点づつ確認しなければならなかったことが、棚正面から一括スキャンできるようになりました。これによって、現品確認時間が大幅に短縮したほか、在庫管理精度が向上してコストダウンに成功しています。
まとめ
以前までは導入費用も高額だったICタグですが、徐々にコストも下がってきているため、導入を検討する企業も増えてきました。バーコードによる管理体制よりも、ミスを減らして作業効率を向上させることができるため、現場の状況に応じて導入を検討してみましょう。
なお、コストが下がってきたとはいえ、初期の導入費用はかかってきてしまうため、事前のシミュレーションを実施することが重要です。