さまざまな天気の中でフォークリフトを使った作業をしなければならないでしょう。しかし、「雨」のときに何の対策もなくフォークリフトを使ってしまうと、死亡事故や機械故障などのトラブルに発展する可能性があります。
そこで今回は、雨天時に安全にフォークリフトを使用するための雨対策について解説します。詳しくご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
雨天による様々なリスクに対する適切なフォークリフトの雨対策とは?
雨天という天候は、フォークリフトの使用においてさまざまなデメリットをもたらします。そのデメリットは時として大事故につながるトラブルの発生を引き起こしてしまうこともあるでしょう。それを防ぐためには、適切な対処を実施してフォークリフトを使用しなければなりません。ここで、フォークリフトの雨対策についてご紹介いたします。
雨で運転者や運転席が濡れるのを防ぐ
フォークリフトは、フォークで荷物を高く積み上げるという特性上、運転席の全面や上部全面は完全に覆われていません。雨天時には、その部分から雨水が侵入し、運転者は濡れてしまいますし、運転席もビショビショになってしまうでしょう。
運転者が濡れることで運転ミスが発生しやすくなりますし、操縦系統が濡れてしまうことで故障の原因になります。そこで、ヘッドガードに、視界を確保しつつ、雨水の侵入を防ぐためのシートなどを装着することで雨対策が可能です。
雨でフォークリフトのスリップ・転倒するのを防ぐ
フォークリフトは相応の重量があり、相応の重量になる荷物を持ち上げるという特性上、普段から転倒のリスクを抱えています。雨天時には足元も濡れていますので、転倒だけでなく運転中のスリップ事故のリスクも高まるのです。
そこで、転倒・スリップリスクの高いスロープ箇所などの地面が濡れることによる事故発生を防ぐために、滑り止め工事を実施するといった対策が有効となります。
滑り止め工事は、フォークリフト以外の作業車両の移動においても転倒リスクを減らせるため、メリットが大きいです。
雨による視界の悪化に対処する
雨天時には、快晴時と比較して視界が悪く、天候次第ではフォークリフトの運転者は大幅に視界を遮られてしまうでしょう。もし、視界が悪いことで前方の物体への接近に気が付かないと、回避行動が間に合わなくなってしまい、衝突事故を起こしてしまうリスクが高まります。
労働安全衛生規則には、以下の規定があります。
第151条の6(転落等の防止)
「事業者は、車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行うときは、車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落による労働者の危険を防止するため、当該車両系荷役運搬機械等の運行経路について必要な幅員を保持すること、地盤の不同沈下を防止すること、路肩の崩壊を防止すること等必要な措置を講じなければならない。」
「2 事業者は、路肩、傾斜地等で車両系荷役運搬機械等を用いて作業を行う場合において、当該車両系荷役運搬機械等の転倒又は転落により労働者に危険が生ずるおそれのあるときは、誘導者を配置し、その者に当該車両系荷役運搬機械等を誘導させなければならない。」
「3 前項の車両系荷役運搬機械等の運転者は、同項の誘導者が行う誘導に従わなければならない。」
雨天時についての言及はありませんが、「転倒防止などの危険防止のために」という意味では該当する条文でしょう。
この条文では「フォークリフトなどの転倒または転落の危険を防止するため『運行経路について必要な幅員を保持する』『地盤の不同沈下を防止する』『路肩の崩壊を防止すること』など必要な措置を講じなければならない。」としています。
また、必要に応じて「誘導者」を配置し、フォークリフトの運転者は誘導者の誘導に従って操縦しなければならないとしているのです。
日ごろの定期的なメンテナンスも重要
雨天時に限った話ではありませんが、雨天時の事故リスクを防ぐという意味においても「定期メンテナンス」を適切に実施することは、フォークリフトの安全な運用のために必要不可欠です。
労働安全衛生規則が定める法定点検
労働安全衛生規則においては「1年を超えない期間に1回定期的に点検する」「1か月を超えない期間に1回定期的に点検する」という頻度で、それぞれについて点検検査を行い、その結果を保存しなければならないと定めています(フォークリフトの安全な運用に関する労働安全衛生規則の条文については「フォークリフトにおける危険行為とは?運搬機械の用途外使用は危険!」をご覧ください)。
修理義務
法定点検を含めたフォークリフトのメンテナンス時に問題が見つかった場合、事業者は速やかにフォークリフトを修理して安全に使用できる状態にしなければならないと、労働安全衛生規則において定められています。
メンテナンスと適切な修理により雨天時にも安全に使用できる
定期メンテナンスと適切な修理の実施は、快晴時はもちろん、雨天時にも安全にフォークリフトを使用するために役立ちます。
フォークリフトは、異常発生時に異音や挙動の変化などを起こしますが、雨天時に使用した際には雨音などの影響でこれらのシグナルを見逃してしまう可能性が高まります。
しかし、きちんと定期メンテナンスおよび適切な修理作業をこなしていれば、そのリスクは抑えられるでしょう。
まとめ:雨天時には万全な安全対策を講じてフォークリフトを使用する
雨天時には、快晴時よりもフォークリフトを安全に使用できなくなるリスクが高まります。労働者の安全を確保するためには、雨という天候・環境の特性を理解して、それに対して適切な対処を実行することが重要です。
もちろん、荒天時にはフォークリフトを使用した作業を延期するなど、責任者として責任ある決断も必要でしょう。
ネット上には過去に発生したフォークリフト関連の事故事例がいくつも紹介されていますので、そちらも確認していただき、同じ失敗をしてしまわないように注意しましょう。