フォークリフトの点検は義務なの?「労働安全衛生法」及び「労働安全衛生規則」について

工場や倉庫などで使用する機械設備等については、一部について法律で「点検・メンテナンス」が義務付けられているものがあります。

もし、法定点検が義務付けられているものの、メンテナンスを怠ってそれが事故の原因になれば大問題です。

そこで今回は、フォークリフトの点検が「労働安全衛生法」や「労働安全衛生規則」などで、どのような扱いになっているかについて解説します。

フォークリフトの点検については「労働安全衛生規則」に条文がある

結論から述べると、フォークリフトの点検は法定点検として義務付けられており、その根拠となる条文は「労働安全衛生規則」にあります。

参考:安全衛生情報センター 労働安全衛生規則 第二編 第一章の二 荷役運搬機械等(第百五十一条の二-第百五十一条の八十三)

年次点検(労働安全衛生規則第151条の21)

第百五十一条の二十一  

「事業者は、フオークリフトについては一年を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一年を超える期間使用しないフオークリフトの当該使用しない期間においては、この限りでない。

一  圧縮圧力、弁すき間その他原動機の異常の有無

二  デフアレンシヤル、プロペラシヤフトその他動力伝達装置の異常の有無

三  タイヤ、ホイールベアリングその他走行装置の異常の有無

四  かじ取り車輪の左右の回転角度、ナツクル、ロッド、アームその他操縦装置の異常の有無

五  制動能力、ブレーキドラム、ブレーキシユーその他制動装置の異常の有無

六  フオーク、マスト、チエーン、チエーンホイールその他荷役装置の異常の有無

七  油圧ポンプ、油圧モーター、シリンダー、安全弁その他油圧装置の異常の有無

八  電圧、電流その他電気系統の異常の有無

九  車体、ヘツドガード、バツクレスト、警報装置、方向指示器、燈火装置及び計器の異常の有無」

「2  事業者は、前項ただし書のフオークリフトについては、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。」

まず、年次点検の頻度は「1年を超えない期間ごとに1回」であり、「定期的に実施する」ことが必要です。ただし、「このフォークリフトは1年を超える期間、使用しないことが決まっている」という場合、その期間内の年次点検は免除されますが、そのフォークリフトの使用を再開するにあたっては年次点検を実施しなければなりません。

検査項目は、条文内に記載されている9つの項目です。

月次点検(労働安全衛生規則第151条の22)

第百五十一条の二十二  

「事業者は、フオークリフトについては、一月を超えない期間ごとに一回、定期に、次の事項について自主検査を行わなければならない。ただし、一月を超える期間使用しないフオークリフトの当該使用しない期間においては、この限りでない。

一  制動装置、クラツチ及び操縦装置の異常の有無

二  荷役装置及び油圧装置の異常の有無

三  ヘツドガード及びバツクレストの異常の有無」

「2  事業者は、前項ただし書のフオークリフトについては、その使用を再び開始する際に、同項各号に掲げる事項について自主検査を行わなければならない。」

まず、月次点検の頻度は「1ヶ月を超えない期間ごとに1回」であり、「定期的に実施する」ことが必要です。ただし、「このフォークリフトは1ヶ月を超える期間、使用しないことが決まっている」という場合、その期間内の月次点検は免除されますが、そのフォークリフトの使用を再開するにあたっては月次点検を実施しなければなりません。

検査項目は、条文内に記載されている3つの項目です。

始業前点検(労働安全衛生規則第151条の25)

第百五十一条の二十五 

「事業者は、フオークリフトを用いて作業を行うときは、その日の作業を開始する前に、次の事項について点検を行わなければならない。

一  制動装置及び操縦装置の機能

二  荷役装置及び油圧装置の機能

三  車輪の異常の有無

四  前照燈、後照燈、方向指示器及び警報装置の機能」

フォークリフトを使うことがわかっている場合、作業開始前までに上記4つの項目についての点検を行わなければなりません。

点検の記録(労働安全衛生規則第151条の23)

第百五十一条の二十三  

「事業者は、前二条の自主検査を行つたときは、次の事項を記録し、これを三年間保存しなければならない。

一  検査年月日

二  検査方法

三  検査箇所

四  検査の結果

五  検査を実施した者の氏名

六  検査の結果に基づいて補修等の措置を講じたときは、その内容」

ここでいう「前二条」とは、年次点検について定めている「151条の21」と、月次点検について定めている「151条の22」のことです。

つまり年次点検と月次点検については、上記6つの内容を記録して、これを3年間は保存しなければなりません。

点検時に異常が見つかった場合(労働安全衛生規則第151条の26)

第百五十一条の二十六 

「事業者は、第百五十一条の二十一若しくは第百五十一条の二十二の自主検査又は前条の点検を行った場合において、異常を認めたときは、直ちに補修その他必要な措置を講じなければならない。」

ここでは「151条の21(年次点検)」「151条の22(月次点検)」「前条(151条の25)(始業前点検)」の3つの点検について、何らかの異常が確認された場合には、速やかにその補修などの必要な措置を講じなければならないとしています。

フォークリフトの点検と労働安全衛生法

「労働安全衛生法」にも、フォークリフトの点検に関する条文が存在します。

労働安全衛生法第45条と関係法令

第四十五条 

「事業者は、ボイラーその他の機械等で、政令で定めるものについて、厚生労働省令で定めるところにより、定期に自主検査を行ない、及びその結果を記録しておかなければならない。」

「2 事業者は、前項の機械等で政令で定めるものについて同項の規定による自主検査のうち厚生労働省令で定める自主検査(以下「特定自主検査」という。)を行うときは、その使用する労働者で厚生労働省令で定める資格を有するもの又は第五十四条の三第一項に規定する登録を受け、他人の求めに応じて当該機械等について特定自主検査を行う者(以下「検査業者」という。)に実施させなければならない。」

参考:安全衛生情報センター労働安全衛生法 第五章 機械等並びに危険物及び有害物に関する規制(第三十七条-第五十八条)

この「特定自主検査」について、フォークリフトが該当するのかについては「労働安全衛生法施行令第15条」において定められています。

労働安全衛生法施行令第15条

「2 法第四十五条第二項の政令で定める機械等は、第十三条第三項第八号、第九号、第三十三号及び第三十四号に掲げる機械等並びに前項第二号に掲げる機械等とする。」

労働安全衛生法施行令第13条

3 法第四十二条の政令で定める機械等は、次に掲げる機械等(本邦の地域内で使用されないことが明らかな場合を除く。)とする。

八 フオークリフト

参考:安全衛生情報センター 労働安全衛生法施行令

フォークリフトがしっかり指定されているのがわかると思います。

特定自主検査を怠ると?

「労働安全衛生第120条」において、特定自主検査の義務を怠った場合には「50万円以下の罰金」に処すると規定されています。

年次点検と特定自主検査の関係性

労働安全衛生法において特定自主検査が必要であると規定しており、労働安全衛生法施行令においてフォークリフトがその対象の1つであることが明確になっています。フォークリフトに関してはもう1つの条文を確認する必要があるのです。

労働安全衛生規則第151条の24

第百五十一条の二十四  

「フオークリフトに係る特定の自主検査は、第百五十一条の二十一に規定する自主検査とする。」

この条文により「フォークリフトの特定自主検査」=「第151条の21で規定されている自主検査(年次点検)」とすることがわかります。

労働安全衛生規則第151条の24の5

「5  事業者は、フオークリフトに係る自主検査を行つたときは、当該フオークリフトの見やすい箇所に、特定自主検査を行った年月を明らかにすることができる検査標章をはり付けなければならない。」

特定自主検査を実施した場合、その実施年月を明確にできる「検査標章」を、そのフォークリフトの見やすい箇所に貼り付ける義務があります。

まとめ:フォークリフトには法定点検の義務がある、資格ある人の手によって適切に定期点検をしよう

この記事ではさまざまな法令についてピックアップしましたが、押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  • フォークリフトには「年次点検」「月次点検」「始業前点検」の3つがある
  • これらの点検義務は「労働安全衛生規則」において規定されている
  • 「労働安全衛生法」ではフォークリフトの「特定自主検査」について規定されている
  • 労働安全衛生規則において「特定自主検査=年次検査」である旨が規定されている
  • 検査記録を3年間残さなければならない
  • 検査結果に問題があれば速やかに補修等を行う必要がある
  • 特定自主検査の検査標章を貼りつける必要がある

定められたルールに則って定期的な検査を実施しなければ、利便性の高いフォークリフトは使用してはいけません。

フォークリフトについては、メンテナンス不足や用途外使用などで死亡事故事例も報告されているなど、使い方次第では人の命に関わる大惨事を引き起こしてしまう可能性もあるのです。

責任者は、フォークリフトの安全な使用を心がけて、労働者の安全を確保したうえで業務を継続することを肝に銘じましょう。

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